「ひるね姫」をみて

はじめに

映画「ひるね姫」をみて僕は何回も泣きそうになった。その訳は後述するが、この映画はとにかく評価が低い。今日(3/20)での映画.comでの評価は3.0である。そんなに悪い映画だったか?ということで筆をとる。
ちなみに僕のバックグラウンドとしては物語の舞台の岡山県倉敷市に関係があるのと車が好きくらいを念頭に入れてもらえたら。

クソミソに言われている理由

  • テーマがベイグ
  • 舞台が岡山や大阪である必然性がない
    • 岡山も倉敷下津井だったのは瀬戸大橋を描きたかっただけ
    • 大阪に行くのは自動運転を際立たせたいためだろうが
  • 何処と無くかおるヒットした直近のアニメ映画のトレース感
  • 流行り物の闇鍋感
    • 自動運転, VR, オリンピック
  • 現実世界とファンタジー世界のオーバーラップの対比がわかりにくい

といったものがざっとあげられる。
まぁわかる。
正直、岡山倉敷である必要性は最後までわからなかった。岡山は別に自動車にゆかりがあるわけでもないし。
また現実とファンタジーとの世界線の移動は何が軸なのかチョイわかりにくい。ファンタジー面では主人公(主人公じゃないと後でわかるが)が魔法を使えるんだが、その魔法=コーディングになっている。ようは現実世界=ソフトのある世界、ファンタジー世界=ハードオンリーの世界という対比で構成されているんだよね。

僕の邪推

映画のテーマは多分、家族愛的なところにあって、CMU出のお母ちゃん(イクミ)のプログラムで動く自動運転車が最後に自宅に戻るとこなんかは家族の絆を感じて御涙頂戴って感じ。
でもねこの映画は僕が思うに亡国日本のお話なんですよ。ハードウェアの泥舟と沈む日本のお話。それをせめてフィクションの中ではハッピーエンドに昇華しようとしているのが本作の裏テーマだと邪推するわけです。オタクの悪い癖ですね。
僕が話したいのは2点あって志島自動車と主人公の使う魔法について。

志島自動車

これはドコがモデルかちょいわからない。創業家をトップに据え城下町ひいて日本経済を支えているという点ではトヨタ。作中にある羽をモチーフにしたロゴや、「心根一つで、人は空も飛べるはず」という社訓はホンダっぽい。そこが自動運転するのにスッタモンダするのが話の盛り上がりの1つなんだが、2020年までに自動運転ということでやっぱりこれはトヨタなんだと思う。

でこれの何がクルか、と言われたら重厚長大自動車産業の終焉を描こうとしてると思ったんですよ。それがファンタジー面。ハードウェアで国を築いているハートランド王国は往時の日本。そこに魔法を使えるが天災(鬼)を呼び寄せるエンシェンが誕生する。これはAI産業の勃興を表すんですね。でもハード屋の王様(志島社長)はそれを認めない、魔法はNGとする、鬼は魔法でないと倒せないとエンシェンはわかっているのに、王様はそれをわかっていない。
この構図はようはトヨタが知の巨人グーグルに潰されるという暗喩。(グーグルは完全自動運転やめちゃったけど、鬼=巨人ということで)
このままじゃヤバイけどなんとか頑張ってほしいよねっていうエールな訳です。

魔法=プログラミング

エンシェンは魔法で機械に感情を与えますが、それはタブレット端末を通じて行われる。そのタブレットを見たらわかるのですが、やっているのは完璧にプログラミングなんですね。プログラミングによって感情を与えている。このお話ではプログラミングはずっと魔法として扱われる。
確実にこれは再魔術化している情報技術へのアイロニーが含まれていて、魔法を魔法としてしか認識していないと限界があることを暗示している。
エンシェン=イクミという天才が日本を助ける自動運転プログラムを作るが、それが理解されない。情シス軽視の日本企業って言ったら薄っぺらいですがそーいうことです。日本はハードで成長した国だからって魔法=ソフトウェアを使えないと先がないよって話ですな。
最後に魔法であるプログラミングが施された自動運転車両が市井に登場することで、魔法であったプログラミングが技術に昇華されると。

結論

講釈垂れましたが、この映画のテーマは家族愛だけでなく亡国日本を憂うものでもあるということです。で、そうじゃないソフトで再成長する日本の姿を示すエールでもある。シンゴジラじゃないけど、日本ガンバレ系には弱いので私は劇場で何回も泣きそうになりました。

小ネタ的なことがたくさん散りばめられてるのはポイントですね。エンジンヘッドは超エヴァっぽいのに、実際にお母ちゃん(イクミ)が宿っていると思われるのはハーツなところなんかもいいですね。ずっとハーツの世話しているお父さんがゲンドウに見えてきます。

高畑充希の岡山弁がハマっていたのでもう一回見に言ってもいいな、ってくらいがこの映画の正当な評価だと思いました。